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東京地方裁判所 平成8年(ワ)1517号 判決

原告

日興自動車株式会社

ほか一名

被告

野村明世

主文

一  原告らの被告に対する本件交通事故に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由

一  原告は、主文同旨の判決を求め、次のとおり、請求原因を述べた。

請求の原因

1  本件交通事故の発生

被告は、次の交通事故(以下「本件交通事故」という。)により頭頂部裂創、左上肢裂創、左大腿打撲、左股関節捻挫、左肩打撲・捻挫等の傷害を受け、後記3の損害を被つた。

事故の日時 平成六年一一月九日午前八時四〇分ころ

事故の場所 東京都北区田端新町三丁目一四番先交差点(以下「本件交差点」という。)

加害者 原告李正利(以下「原告李」という。加害車両を運転。)

加害車両 普通乗用自動車(事業用タクシー練馬五六あ二一三六)

被害者 被告(昭和四七年五月六日生。当時二二歳。)

事故の態様 加害車両が田端新町三丁目交差点方面からJR田端駅方面に向かい直進中、右方の交差道路から被告の乗車した足踏み式自転車が本件交差点内に進入してきたため、加害車両と衝突した。

2  責任原因

(一)  原告李

原告李は、右方道路からの車両等の動静に注意せず、漫然本件交差点に進入した過失により本件交通事故を引き起こしたものであるから、民法七〇九条に基き、被告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

(二)  原告日興自動車株式会社(以下「原告会社」という。)は、原告李の使用者であり、本件交通事故は、原告会社の事業の執行につき生じたものであるから、原告会社は、民法七一五条一項に基づき、被告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

3  損害

(一)  治療費 二〇万五〇六〇円

(1) 東京女子医科大学附属第二病院分 七万七四一〇円

通院日・平成六年一一月九日(実日数一日)

(2) 貴友会病院分 一二万七六五〇円

通院期間・平成六年一一月一〇日から同年一二月一九日まで(実日数九日) 四万五三二〇円

(二)  休業損害 四万五三二〇円

被告は、休業損害算定の基礎となる収入額等についての公的資料を提出しないから、その休業損害を算定するに当たつては、賃金センサス平成五年女子労働者学歴計年齢別二〇歳ないし二四歳の年収額二七五万七三〇〇円の六割である一六五万四三八〇円を基礎とし、右通院期間一〇日間についての休業損害を算定すると次のとおり、四万五三二〇円となる。

1,654,380円÷365日=4,532円

4,532円×10日=45,320円

(三) 慰謝料 八万二〇〇〇円

本件交通事故による被告の慰謝料としては、右金額が相当である。

(四) 右合計額 三三万二三八〇円

4  過失相殺

本件交通事故は、加害車両が優先道路を進行中、被告の運転する足踏み式自転車が、突然、交差道路から本件交差点内に進入したため発生したものであり、被告の損害額を算定するに当たつては、被告の右過失を七割斟酌すべきである。

すると、右過失相殺後の被告の損害額は、九万九七一四円となる。

5  損害の填補

原告会社は、治療費として、東京女子医科大学附属第二病院に対し七万七四一〇円、貴友会病院に対し一二万七六五〇円(合計二〇万五〇六〇円)を支払つた。

すると、被告の損害は、すべて填補されて残存しないことになる。

6  よつて、原告らは、被告に対し、本件交通事故に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求める。

二  被告は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しないので、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

三  右によれば、原告らの請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 河田泰常)

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